お店でスタッフのネームプレートがイニシャル表記になっている
- iroha
- 2月9日
- 読了時間: 3分
近年、多くの企業や自治体が、従業員の名札をフルネームからイニシャルや役職名のみの表記に変更する動きが広がっています。この背景には、従業員のプライバシー保護やカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策といった重要な理由が存在します。
1. プライバシー保護の重要性
従来、名札には従業員のフルネームが記載されることが一般的でした。しかし、フルネームを公開することで、個人情報が特定されるリスクが高まります。特に、SNSやインターネット上での情報拡散が容易な現代において、名前から個人の詳細な情報が検索され、プライバシーが侵害される可能性があります。このようなリスクを軽減するため、名札をイニシャルや役職名のみの表記に変更する企業が増えています。
2. カスタマーハラスメント(カスハラ)対策
カスハラとは、顧客から従業員への過度な要求や暴言、威圧的な態度などを指します。従業員のフルネームが名札に記載されていると、顧客がその名前を用いて個人的な攻撃を行うリスクが高まります。例えば、名前を呼び捨てにして威圧したり、SNS上で実名を晒すといった行為です。これらの行為は、従業員の精神的な負担を増大させ、働きやすい環境を損なう原因となります。そのため、名札の表記を簡略化することで、カスハラのリスクを低減させる取り組みが進められています。
3. 具体的な事例
大手コンビニエンスストアのローソンでは、従来、名札には実名(姓)の記載を基本としていましたが、カスハラ対策やプライバシー保護の観点から、店舗の判断で「役職+任意のアルファベット表記」への変更を可能としました。
また、ファミリーマートでも、従業員からの要望や働きやすい環境づくり、カスハラ対応を理由に、名札の表記を実名以外でも可能とする方針を打ち出しています。
さらに、セブン-イレブン・ジャパンも、顧客からのカスハラ防止のため、名札の名前表記を役職や頭文字に変更する取り組みを行っています。
4. 法令の改正と自治体の対応
2023年8月1日から、道路運送法に係る法令が一部改正され、バス・タクシーなどの車内での乗務員氏名の掲出義務が廃止されました。
これにより、乗務員のプライバシー保護が強化され、カスハラ防止の一環として評価されています。また、各自治体でも、窓口業務に従事する職員の名札表記をフルネームから苗字のみ、あるいはイニシャルや役職名のみとする動きが広がっています。例えば、品川区役所では、職員が来庁者から名前を晒すと脅迫された事例を受け、名札の表記方法を見直す検討が行われています。
5. 名札表記変更のメリットとデメリット
名札をイニシャルや役職名のみの表記に変更することには、以下のメリットとデメリットが考えられます。
メリット:
プライバシー保護: 従業員の個人情報が特定されにくくなり、SNS上での晒し行為やストーカー被害のリスクが低減します。
カスハラ防止: 顧客からの個人的な攻撃や威圧的な行為を抑制し、従業員の精神的負担を軽減します。
安心感の向上: 従業員が安心して業務に従事できる環境を提供し、モチベーションの向上や離職率の低下につながります。
デメリット:
顧客とのコミュニケーションの希薄化: 名札にフルネームが記載されていないことで、顧客が従業員に親近感を持ちにくくなる可能性があります。
責任の所在が不明確になるリスク: 顧客が問題を報告する際、誰が対応したのかを特定しにくくなる場合があります。
6. 今後の展望
名札の表記方法の見直しは、従業員のプライバシー保護やカスハラ防止の観点から、今後も広がっていくと考えられます。企業や自治体は、従業員が安心して働ける環境を整えるため、名札の表記方法だけでなく、カスハラに対する教育や対策を総合的に進めていくことが求められます。
Comments